【母校ニュース】日本初、AIが学長の声で式辞を読んだ

卒業生の皆さん、お元気ですか。先月はサイバーセキュリティの話題をお届けしました。今月は、もっと驚く話があります。母校の卒業式と入学式で、AIが学長の声で式辞を読みました。日本初です。

しかもそれだけではありません。天皇皇后両陛下が臨席される国際的な授賞式に、母校の学生が招かれています。

何が起きているのか、今月も紐解いていきます。


1. AIが学長の声で式辞を読んだ ── 日本初の試み

2026年度 東京情報大学入学式
2026年度 東京情報大学入学式(出典:東京情報大学)

「日本初」が2回

2026年3月25日の学位記授与式(卒業式)

式辞の時間になると、壇上から聞こえてきたのは吉本博明学長の声。しかし、そこにいるのは学長本人ではありません。

AIが、学長の声で式辞を読んでいたのです。

これが日本初の「AI学長式辞」でした。

そして4月5日の入学式でも、同じ試みが実施されました。517名の新入生を迎える場で、再びAIが学長の声で語りかけた。入学式での実施も、日本初です。

どんな技術なのか

3つの技術が組み合わされています。

  1. AIボイスクローン技術 ── 吉本学長の実際の音声データを学習し、声質や話し方を忠実に再現
  2. 生成AIによる文章作成 ── 学長監修のもと、卒業生・新入生へのメッセージを生成
  3. AIと人間の協働 ── AI式辞の後に、学長本人が自らの言葉で語りかける

AIだけで完結させない。AIの後に、人間が語る。この構成そのものが、メッセージになっています。

(AIイメージ生成画像)

AIの式辞にアウラは宿るのか」

卒業式では、吉本学長がこう問いかけました。

複製可能なAIによって生成された式辞に「唯一性(アウラ)」は宿るのか。AIが日常的に使われる現代において、自分自身の価値や人間ならではの「ありがたみ」をどこに見出すのか── と。

「アウラ」とは、ヴァルター・ベンヤミンが論じた概念で、「今、ここにしかない」一回性の輝きのこと。写真や印刷で複製できる時代に、オリジナルだけが持つ価値とは何か── という問いです。

そして学長は、この「ありがたみ」は卒業生・修了生自身が掴み取るものであることを伝えました。

入学式では、情報の本質についてこう語られています。

情報とは単なるデータではなく、人間の感情や心の動き(情)と、それに応答する世界や他者からの反応(報)を含む。情報を扱うということは極めて人間的な営みである。

AIを使いこなす側として考える。技術に使われるのではなく、技術を使う人間を育てる。その姿勢が、式辞の構成そのものに表れていました。


2. 天皇皇后両陛下臨席の授賞式に、母校の学生が参加

日本国際賞授賞式のイメージ(AI生成画像)

日本国際賞(Japan Prize)とは

日本国際賞は、科学技術の分野で独創的な成果を挙げた研究者に贈られる国際的な賞です。毎年4月、天皇皇后両陛下が臨席される授賞式が開催されます。

2026年4月14日、新国立劇場で行われたこの授賞式に、東京情報大学から学生4名と教員1名が参加しました。

参加したメンバー

氏名 所属
粟野浩大 大学院 総合情報学研究科 博士前期課程1年
柴田涼平 大学院 総合情報学研究科 博士前期課程1年
樫本万実 総合情報学部 2年
パンタ・アシス 総合情報学部 2年
田中啓介 総合情報学部 准教授

受賞者と情報大のつながり

2026年の受賞者の一人、シンシア・ドワーク博士(ハーバード大学)は、差分プライバシーや公平性などデジタル社会の倫理的課題の解決に先導的な貢献をした研究者として評価されました。差分プライバシーは、個人のデータを守りながら、データ全体の傾向を分析する技術です。

サイバーセキュリティ、プライバシー保護、AI倫理── 3月号でお伝えした情報大の研究テーマと重なります。

参加した学生は「情報科学を学ぶ自分にとって、差分プライバシーの研究が社会に与えるインパクトの大きさを実感した」「世界的な研究者のスピーチを直接聞くことができ、研究への意欲が高まった」と語っています。

世界最高峰の研究者を間近で見る経験。これは教科書では得られないものです。

参考リンク


3. 高校生に生成AIを教える ── 農大三高で模擬授業

高校生への生成AI模擬授業のイメージ(AI生成画像)

マッキン教授の授業

4月13日、東京農業大学第三高等学校で、東京情報大学のマッキン教授が模擬授業を実施しました。

テーマは「生成AIの仕組みと向き合い方」。

授業では以下の内容が扱われました。

  • 生成AIの歴史と技術的背景
  • LLM(大規模言語モデル)RAG(検索拡張生成)などの最新トレンド
  • 生徒がスマートフォンで生成AIを実際に使うワークショップ

「正しいかどうかは自分で判断する」

マッキン教授が強調したのは、こんなメッセージでした。

出力された内容が正しいかどうかは自分で判断する必要がある。

AIが答えを出してくれる時代に、その答えを鵜呑みにしない力。情報リテラシーの本質です。

3月号でお伝えした「ICC TOKYOで高校生にマルウェア解析を教える」に続いて、今度は「高校生に生成AIとの向き合い方を教える」。

情報大の教員が高校の現場に出向いて、次世代に直接伝えている。この継続的な取り組みは、ありがたいことです。


4. 517名の新入生 ── ウェルカムフィールドワーク

佐原フィールドワークのイメージ(AI生成画像)

佐原の街を歩く

4月7日・8日、新入生と編入生を対象にウェルカムフィールドワークが実施されました。

場所は千葉県香取市佐原地区。江戸時代から続く歴史的な街並みが残る場所です。

新入生たちは班ごとに佐原の街を探索し、地域団体から歴史やまちなみ保存活動について学びました。写真や動画で地域の魅力を記録し、観察力・表現力・コミュニケーション力を養うプログラムです。

情報大らしい新入生歓迎

街を歩いて、見て、記録して、伝える。

一見するとアナログな活動ですが、「情報を扱う」ことの出発点は、現場を自分の目で見ることです。AI学長式辞で語られた「情報を扱うということは極めて人間的な営み」という言葉と、つながっています。

517名の新しい仲間が、こうして大学生活をスタートさせました。


まとめ:母校は「AIを教える大学」になった

AIを教える大学のイメージ(AI生成画像)

今月のニュースを振り返ってみましょう。

  • AI学長式辞(日本初) ── ボイスクローン×生成AIで卒業式・入学式を実施
  • 日本国際賞 ── 天皇皇后両陛下臨席の授賞式に学生が参加
  • 高校生に生成AI授業 ── 農大三高でLLM・RAGを教える
  • 517名の新入生 ── ウェルカムフィールドワークで大学生活スタート

3月号ではサイバーセキュリティ。4月号ではAI。

共通しているのは、「技術に使われるのではなく、技術を使う人間を育てる」という姿勢です。

AI学長式辞は、単なるパフォーマンスではありませんでした。AIにできることと、人間にしかできないことを、式典の場で見せる教育的な試みでした。学長が「アウラ」という言葉を引いて問いかけたように、情報大は技術と人間の関係を真剣に考えている。

高校生にAIの使い方を教え、国際的な授賞式に学生を連れていき、新入生には街を歩かせる。

母校は「AIを教える大学」として、確かな一歩を踏み出しています。

卒業生として、誇らしく思います。


編集部より

「AI学長式辞」と聞いたとき、正直なところ「大丈夫かな」と思いました。しかし実際の構成を知って、考えが変わりました。

AIが式辞を読んだ後に、学長本人が語る。「AIにはアウラがあるのか」と問いかける。これは、AIの可能性と限界を式典の場で体験させる、情報大学ならではの教育だと感じました。

在学中にはなかった「生成AI」が、今や大学の式典にまで入ってきています。時代の変化の速さに驚くと同時に、母校がその最前線にいることを嬉しく思います。

皆さんの近況や、母校に関する情報・ご感想がありましたら、ぜひ校友会までお寄せください。

── 東京情報大学校友会 編集部

次号は2026年5月号をお届けする予定です。

何か母校に関する情報やご要望があれば、校友会までお寄せください。


本記事は、東京情報大学公式サイトを参考に作成しました。

主要参考リンク

TUISmag – 母校ニュースダイジェスト
発行:東京情報大学校友会